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僕には愛してやまないパジェロJrという、かけがえのない親友であり家族がいる。
そのパジェロJrが昨年末、ガソリンメーターが下がったきり動かなくなった。
いつもお世話になっている車検やメンテナンスもしてくれるガソリンスタンドに連絡して、年明けに連れてきてと言われ本日連れて行った。
パジェロJrを預けてしばらくして連絡があり、ガソリンメーターだけパーツが見つからないとのことだった。
パジェロJrは元々姉が新潟の豪雪地帯で乗っていたもので、数年で私に譲ってくれたものだ。
譲ってもらってから約25年、姉が乗っていた期間を含めると約30年近くになる。
パーツはもう生産終了でメーカーから購入できない。パーツが手に入らなくなる日が来るとは思っていたが、彼の為に自分でなんとか今の状況を改善しなきゃいけないと決断した。
いつも思っている事だが、大切な道具や自動車はどうしてずっと使い続けられるようにならないんだろう?という疑問というか不満というか、そんな思いをいつも持っている。
たとえば雲上時計のパテックフィリップは永久修理を保証している。永久にパーツを作り続けてくれるので永久に修理できる。
どんな道具でもずっと使い続けたいと思うのは間違った事ではないと思うし、数年で自動車を乗り換えてしまう人の気持ちは僕にはわからない。
買うときから売るときの事を考えて買うというのが、いまどきの考え方の1つらしい。確かにリユースするというのは素晴らしい。
自分が必要なくなっても捨ててしまわずに、必要とする誰かの手に渡りまた使われるのは、道具にとっても人にとってもしあわせな事だ。
だからと言って最初から売る事を前提に購入するというのは、地金のような流動資産ならわかるが、自動車にそれをはめ込むのはやっぱりわからない。
正確にはわかりたくない。
自動車は最後どうなるのだろう?
スクラップ場に山積みされた自動車の映像は見たことがあるが、その後どうなるのか?エンジンやシャーシ、ボディなどの金属はちゃんとリサイクルされるのか?知りたいが本気で調べたことはない。
たぶん99%の自動車を保有する人は、自分の乗っている自動車を廃車にして、海外にも輸出されず、完全に自動車としての役目を終えてた後どうなるか?知らないと思う。
2025年現在、2002年に成立・公布され、2003年に施行された自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化等に関する法律)に沿って自動車はリサイクルされている。
年間で350万台程度の自動車が廃車されている。すごい数だね。
総重量の約80%がリサイクルされ、20%がシュレッダーダストとして処分されている。はて?80%もリサイクルされている?本当に?どこで?
僕はかなり多岐に渡る知識が必要な仕事をしている。知識というのは一次情報に基づき自分で確認した情報で、いい加減なものは知識とは言わない。
自動車リサイクル法の所管官庁である経産省の本省、大臣官房会計課にもちょくちょく出入りして脳みそが毛穴から出ちゃうほど考えるような事もしてきた。
それでも自動車のリサイクルがそこまで進んでいる現場は見たことがない。人に見せたくないのだろうか?それとも僕が知らないだけだろうか?
特にエンジン、フレームなどのリサイクルがどうなっているか知りたい。金属部品の塊だし自動車の命そのものだから、ちゃんとリサイクルされて生まれ変わって、次の人生を歩んでいると思いたい。
自動車は廃車後にリサイクルされる事を前提に、金属部品だけ取り出せるように設計されているとは思っていない。
たとえばバルブにゴムのパッキンを使っているかは知らないが、金属部品とプラチックやゴムが1つの部品として機能するように作られているパーツは数えきれないほどあるだろう。
つまり、エンジンだけバコっと取り出しても100%同じ金属の塊ではないし、プラチックやゴムもあるのではないかと考えている。
様々な金属とプラスチックやゴムなどで構成された部品を、どうやって金属、プラスチック、ゴム、その他に分類し、異なる金属を最終的に無駄なく元の金属としてリサイクルできるように分類するのか?皆目見当がつかない。
いろいろ調べたが自動車メーカーのホームページでは全くわからないので、Youtubeのリサイクル事業者の動画を視聴してみた。
【超最先端】日本では考えられない巨大選別工場の中身が凄すぎました https://www.youtube.com/watch?v=GS8d3BaISFs
【超最先端】月間2,500トン!?日本では考えられない巨大選別工場潜入 https://www.youtube.com/watch?v=thOOE4ztiKs
この動画は非鉄金属(ミックスメタル)のリサイクル工場の動画で、アルミだけを選別する工程を説明した動画だ。
約1万平米(3000坪)総工費15億円の非鉄金属(ミックスメタル)のリサイクル工場で、ミックスメタルをアルミ、アルミ缶、ステンレス、銅、亜鉛、真鍮(銅と亜鉛を混ぜ合わせた合金)、基盤、プラスチック、ダスト、ゴミなどに選別している。
ミックスメタルは国内でほとんどリサイクルされることはなく今までは輸出されていたが、このリサイクル工場では国内循環できるレベルに選別している。
この段階で総重量の約80%がリサイクルのうち、ミックスメタルは国内でリサイクル、再利用できるレベルの話ではなかった事がわかる。
この動画ではアルミが主体となるミックスメタルから、アルミだけを選別する工程を説明しているが、自動車も当然ミックスメタルになる。
自動車の総重量の約80%がリサイクルされているはずだが、ミックスメタルは海外送りになっているので、最終的にどのようにリサイクルされているか厳密な追跡調査を行わないと正確なリサイクル率は出ない。
そしてミックスメタル以外の金属比率はどの程度あるのか?ミックスメタルの比率はどの程度なのか?知らないと話にならない事もわかる。
約1万平米(3000坪)の大きなリサイクル工場だが、効率化を進めることで従業員は6名、ピッキング(手選別)の従業員35名で運営されている。
アルミを選別するため、風力、磁力、渦電流選別、X線選別、色選別をおこなっている。アルミの選別は以下の工程でおこなわれる。
風力選別機を使い、風の力で重いものと軽いものを分ける。軽いプラスチックやビニール、ゴミを除去する。
渦電流選別機でアルミ、銅、真鍮、亜鉛、基盤の5品目を残し、ステンレス、電線、ゴミを除去する。
X線選別機でアルミ以外の銅、真鍮、亜鉛、基盤を除去する。アルミと亜鉛は見た目で分別するのが難しが、X線選別ではアルミと亜鉛を選別できる。
最後に残ったものがアルミだが、機械で除去できなかった銅、真鍮、基盤、ゴミなど混じっているため、最後は人の手でアルミのみを残し、銅、真鍮、基盤、ゴミなどを除去する。
特に破砕後の形状が丸いものや、大きすぎたり、重すぎたりすると、機械でどうしても取る事が出来ないので人の手で除去する必要がある。
アルミのリサイクルを調べていて、リサイクル工場で選別されたアルミとは、純然たるアルミニウム(Al)の事なのか?疑問に思ったので調べてみた。
自動車でアルミニウムを使用している箇所は沢山あるが、ラジエーターのフィンにアルミニウムが使用されている。
しかしフィンに使用されているアルミニウムは、アルミニウム合金でアルミニウム(Al)ではないようだ。
アルミニウム合金(aluminum alloy)とは、アルミニウムを主成分とする合金である
アルミニウムは軽いという特徴がある。一方で軟らかい金属であるため、銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルなどを添加して合金にすることで強度などの特性の向上したのがアルミニウム合金である。
アルミニウム合金を加工する場合は大きく分けて展伸法と鋳造法が採用される。
アルミニウム合金は、他の金属を添加した合金なので、アルミニウムとしてリサイクルするためには、添加した金属を取り除くか、アルミニウムだけを取り出さなくてはならない。
アルミニウム合金は、添加する物質(銅、マンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛、ニッケルなど)によってどのように分類され、何に使用されているか?調べてみた。
アルミニウム合金番号
アルミニウム合金番号は4桁の数字で、1桁目は合金系、2桁目はその合金が改良されている場合は1以上の数字、改良されていない基本合金は0、3~4桁目は1桁目が1(純Al)の場合は純度を表し、2以上の場合は合金番号を表す。
1桁目
1:純Al(アルミ)系
2:Al-Cu(銅)系
3:Al-Mn(マンガン)系
4:Al-Si(シリコン)系
5:Al-Mg(マグネシウム)系
6:Al-Mg(マグネシウム)-Si(シリコン)系
7:Al-Zn(亜鉛)-Mg(マグネシウム)系
2桁目
0:基本合金
1~:改良形
N:日本独自の規格、国際登録以外の規格
3~4桁目
1桁目が0(純Al)の場合:純度
合金:旧アルコア記号
日本独自:制定順
1000系アルミニウムは純度99.00%以上のアルミニウムで、放熱性、導電性、加工性、耐食性に優れている。強度が低いので構造体には適していない。主に放熱板、送配電用材料、家庭用品で使用されている。
放熱性、導電性
熱伝導率や電気伝導率が非常に高い。放熱性や電気的接続が求められる用途に適している。
加工性
軟らかく展性や延性に優れており、プレス加工、引き抜き、深絞り加工などが容易。
耐食性
アルミニウムの純度が高いため、酸化による腐食に強い。特に化学薬品や水分にさらされる環境で優れた耐久性を発揮する。
自動車の部品の使用箇所
【放熱部品】ラジエーター、ヒートシンク
【装飾部品】内外装パネル、エンブレム
【耐食性部品】燃料タンクのキャップやパイプ
【ワイヤリングの導電性部品】電気系統で使われる配線や接続部品
1000系アルミニウムの使用用途
【家庭用品】調理器具(鍋、フライパンなどの内側部分)
【電気製品】電子機器のヒートシンクやコンデンサのケース
【包装材】アルミホイル、飲料缶
【建築】サイディング、屋根材、トリム材
【航空・宇宙】燃料タンクや軽量部品
【化学工業】化学薬品の容器や配管
強度が高く、鋼材に匹敵する合金。Al-Cu系では「ジュラルミン」「超ジュラルミン」と呼ばれる2017、2024、2219が代表的。耐食性、溶接性に劣る難点がある。
強度
強度が高く、鋼材に匹敵する合金。機械的荷重がかかる用途に適している。
部品 | 金属 | 補足 |
---|---|---|
エンジンコンポーネント | 7000系アルミニウム合金 | |
ピストン | 2000系アルミニウム合金、4000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金 | |
シリンダーヘッド | 2000系アルミニウム合金、4000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金 | |
コンロッド | 2000系アルミニウム合金、3000系アルミニウム合金 | |
インテークマニホールド | 6000系アルミニウム合金 | |
ラジエーター | 1000系アルミニウム、3000系アルミニウム合金、4000系アルミニウム合金 | |
ヒートシンク | 1000系アルミニウム | |
コンデンサー | 3000系アルミニウム合金、4000系アルミニウム合金 | |
ドライブシャフト | 7000系アルミニウム合金 | |
ブレーキ | 7000系アルミニウム合金 | |
シャーシ | 2000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金 | |
シャーシ(スポーツカー・レーシングカー) | 7000系アルミニウム合金 | |
フレーム | 5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金 | |
フレーム(スポーツカー・レーシングカー) | 7000系アルミニウム合金 | |
モノコック | 6000系アルミニウム合金 | |
トランスミッション 歯車 | 4000系アルミニウム合金 | |
トランスミッション 内部部品 | 4000系アルミニウム合金 | |
サスペンションアーム | 2000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金、7000系アルミニウム合金 | |
サスペンションブラケット | 6000系アルミニウム合金 | |
燃料タンク | 3000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金 | |
燃料タンクのキャップやパイプ | 1000系アルミニウム | |
EVバッテリーケース | 3000系アルミニウム合金、5000系アルミニウム合金、6000系アルミニウム合金 | |
EVバッテリーケース サポート部材 | 3000系アルミニウム合金 | |
ワイヤリングの導電性部品 | 1000系アルミニウム | |
排気マニホールド | 4000系アルミニウム合金 | |
ターボチャージャーのハウジング | 4000系アルミニウム合金 | |
内外装パネル | 3000系アルミニウム合金 | |
内装の仕上げ材 | 1000系アルミニウム | |
トリム部品 | 3000系アルミニウム合金 |